コラム

配偶者の不倫に対する対応

配偶者が不倫をしているかもしれない②~証拠の必要性とタイミング~

弁護士 小島梓

 「配偶者の直感」というのは非常によく当たります。
 特に長年夫婦関係を続けていれば,ちょっとした変化,兆候から不倫をしているという確信を持つにいたる方が少なくありません。
 ただ,残念ながら,直感や感覚では不倫の証拠にはなりえません。少なくとも裁判では通用しません。

 では,裁判等になっていない,交渉の段階でも証拠は必要なのでしょうか。実は,確信がある方ほど,客観的な証拠を得ずに行動に移してしまい,後に思わぬ不利益を被るケースがございます。
 そこで,今回はまず,不倫の証拠がなぜ必要なのか,証拠獲得のタイミングについてご説明したいと思います。

(1)証拠の必要性
 配偶者や不倫相手を問い詰めたり,慰謝料請求をすると,不倫の事実を否定されることは珍しくありません。確信を持っているお客様にとっては,そんなことがありうるのかと思われるかもしれませんが,やはり,悪いことをしているという自覚はされている方が多いため,いざとなると,事実であったとしても否定するというのがむしろ自然な流れとお考えいただいた方が良いと思います。

 このように,証拠がない状態で動いた結果,配偶者や不倫相手に不倫の事実を否定されてしまいますと,途端に交渉は行き詰まってしまいます。
 なぜなら,交渉材料がない状態になってしまうからです。仮に証拠があれば,否定されたとしても,ちゃんと事実を把握しているということ,訴訟でも戦える材料があることを告げられますので,交渉を先に進める方法も出てきますが,それがない場合には,交渉は終了となってしまいます。

 その結果,いかに確信があっても,慰謝料請求等は断念せざるを得なくなってしまったり,ご自身の希望通りに事を進めることができなくなってしまったりする事態になります。
 このように,むしろ,交渉で何かを解決したいと思う時こそ,慎重に証拠を獲得する必要があります。

(2)タイミング
 次に,しっかりとした証拠を確保した後に,行動に移すこと,すなわち,タイミングが重要になります。

 例えば,妻が夫に対して,「不倫をしているのではないか」と問い詰めますと,通常,夫は必至で隠そうとしますので,実際には不倫をしていたとしても,警戒して,しばらくの間は不倫相手と接触しないようにしようと考えます。
 そのように警戒されてしまいますと,証拠をとるのは大変難しくなります。事実はあるのに証拠が取れないという結果になりかねません。

 してがって,当事務所では,配偶者が不倫をしているかもしれないという疑いを持ったときには,すぐに配偶者を問い詰めたりするのではなく,先に,別の方法で事実を確認し,証拠をとる方法を検討することをお勧めしています。

 不倫の証拠の必要性や,動くタイミングなどはご理解いただけたかと思います。ただ,これはあくまで,一例にすぎません。実際には,ご自身が何を優先したいのか,主に話し合いたい相手は配偶者なのか不倫相手なのか,メインの目的は何なのかによって,必要なものや動きも変わってまいります。
 早い段階で一度ご相談いただけるとよろしいかと思います。

 次に,不倫の証拠について,一定の証拠は確保されているが,不十分という場合も珍しくありません。
 そこで,次回は,証拠の中身について簡単にご紹介したいと思います。