損害・加害行為との因果関係③
弁護士 小島梓
不貞行為に基づく損害賠償請求における「損害」のうち、妻の精神的苦痛(慰謝料)について、具体的な金額がどのように決まってくるのかということを、前回のコラムにてご紹介しました。
今回は、慰謝料以外の費目としてどういったものがあるのかといったことをご説明します。
(1)調査費用
訴訟において、よく問題になるのが不倫の調査に要した調査費用です。
夫が不倫をしているかもしれないと考えた妻が、確認をするために調査会社を使って調査を行い、不倫の証拠が取得でき、それを立証の材料として、交渉をしたり、裁判手続きをとったりするケースは非常に多いです。
その場合、この証拠を採るための調査に要した費用は損害として、不倫相手の女性に請求し、認容されることはあるのでしょうか。
結論から申し上げますと、調査費用についても慰謝料とは別に損害として認められることがあります。事案によって、認められるか否か、認められるとして全額なのか一部なのかという点は異なります。
調査会社や調査内容によりますが、調査費用は3桁になることも珍しくありません。そのため請求できるか否か、請求する側にとっては重要な事情になろうかと思いますので、妻側としては専門家にあらかじめ見通しを相談してみることをお勧めします。
逆に、請求される側、不倫相手の女性としては、慰謝料とは別に高額の調査費用が損害として認められる可能性があることに注意を要する必要があるかと思います。
(2)弁護士費用
妻が不倫相手の女性に対して不貞行為に基づく損害賠償請求を行うにあたり、弁護士を代理人とすることは一般的になりつつあります。この際に要した弁護士費用について、損害の一部として請求し、認容されることはあるのでしょうか。
各種裁判例に鑑みますと、妻が支払った弁護士費用の一部は認容される傾向にあります。
損害として認めるか否かのポイントは、不貞行為と因果関係があるか否かという点になりますが、基本的には、不貞行為に基づく損害賠償請求に関して、弁護士をつけて対応する必要があると考えられることが多いため、因果関係が否定されることは珍しいです。
結果、少なくとも弁護士費用の一部が認容されることになることが多いということになります。
以上が、妻の精神的苦痛(慰謝料)の他に問題となることが多い損害項目となります。その他にも不倫との因果関係、すなわちその必要性と相当性が認められますと、損害として認められることがあります。不貞行為に基づく損害賠償請求となりますと、どうしても慰謝料部分が注目されがちですが、その他にも認められうる費目があるため、予想外の金額となることもありますので、請求する側もされる側も注意が必要です。