不倫と懲戒処分③
弁護士 長島功
不倫と懲戒処分②では、懲戒解雇が無効とされた事例を取り上げましたので、今回は逆に有効とされた事例をご紹介しようと思います。
今回は、私立学校における不倫で、懲戒解雇の有効性が問題となった事案です。
この事案では、既婚者である教師が、学校に通う子の保護者と不倫関係をもちました。当該教師は、交際相手である保護者の子と、授業や部活動でも接点があったというケースです。
こういった事案で、裁判所はこの交際について、社会生活上の倫理及び教育者に要求される高度の倫理に反しており「教職員としての品位を失い、学院の名誉を損ずる非行のあった場合」という勤務規定に該当すると判断しました。
また懲戒権の濫用ではないかという点については、教師は妻子がありながら、自らが指導する生徒の母親と情交関係を持ったもので、単なる私生活上の非行とはいえないことや、子が退学に至っており、子どもに対する教育上の悪影響が心配されることなどを挙げて、懲戒権の濫用ではないと判断しています。
教育現場などは典型だと思いますが、このように高い倫理観が求められる職場の不倫は、純粋な私生活上の行為に過ぎないとはなかなか評価されにくいです。この辺りは、一般の企業における不倫とはかなり扱いが異なっていると思います。本件では、そういった職業の特殊性に加えて、相手が保護者であり、不倫をきっかけに子どもが退学しているといった事情もあり、懲戒解雇を有効と判断したものと思われます。