不倫とセクハラの主張
弁護士 長島功
会社や学校など、同じ組織の中で不倫が行われた、セクハラだったという主張がなされ、懲戒解雇の処分や損害賠償請求がなされるケースがあります。
典型的には、上司と部下や、教授と学生や指導者と選手といった上下関係がある中で不倫がなされた場合に、このセクハラの訴えが出るケースが多いです。そして、セクハラの訴えを起こされた側としては、合意の下で不倫を行っていただけで、セクハラではないと反論し、紛争になることがあります。
そこで、この合意の下で不倫をしていただけという反論がどのように扱われる傾向にあるのかをお話ししていこうと思います。
まず、一般的にセクハラというのは「相手方の意に反する性的な言動」とされており、明確に相手が拒否の態度を示している場合は、この判断は容易にできます。
ただ、この拒否の態度が明確でないものや、外見上は嫌がっていないもの、むしろ相手の方から積極的な言動があるケースもあり、一見すると意に反していないようにみえるのですが、こういったケースでもセクハラに該当すると判断した裁判例はあります。実際の事例では、二人で食事に行ったり、贈り物や感謝の言葉を述べていたり、長期間にわたる関係性を継続しているようなケースであっても、セクハラと判断されているものがあります。
これは上下関係のある中では、どうしても下の者は友好的な関係を保ちたいという意識が働くため、これら友好的な言動があるからと言って、当然に同意の下での不倫だったという反論が認められる訳ではないためです。
とはいえ、ケースによっては、セクハラの訴えがなされても、それに該当しない場合もありますので、相手方とのやり取りは必ず保管し、トラブルになった場合には、弁護士に一度相談することをお勧めします。