妊娠を避けるような方法をとるべき義務があったとした裁判例
弁護士 幡野真弥
東京地裁令和 2年11月20日判決をご紹介します。
婚活サイトで知り合った原告と被告が交際し、原告が妊娠・中絶しました。
原告(女性)は、被告(男性)に対し、負担軽減・解消義務違反等を主張して、損害賠償を求めました。
裁判所は、被告には負担軽減・解消義務違は認めなかったものの「原告は,性交渉をもった同年9月28日時点で,被告とはまだ3回目に会ったに過ぎず,性交渉もその日が最初であったのであるから,婚姻の意思や被告の子を産むことまで了承していたと認めることはできず,妊娠することについてまで同意していたものとは認められない。したがって,被告には,原告と性交渉するに際し,原告が妊娠することのないよう,避妊具を付けるかその他避妊を避けるような方法を採るべき義務違反があったと認めることができる。原告の主張にはこのような主張も含まれているものと解する。」「被告の違法行為により原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては,被告が避妊手段をとらずに性交渉を行い,原告を妊娠させたことを中心とするものではあるものの,原告の年齢,原告と被告との交際の経緯,その後の被告との交渉の経緯等を総合考慮すると,原告が被った精神的苦痛は大きなものであり,80万円をもって相当と解する。」と判断しました。
なお、本件では、原告が、被告の勤務会社人事部宛に、原告が拒否したのに被告が避妊もせずに無理やり性行為を行い原告を妊娠させたこと、被告は大学時代に3年交際し7年間婚姻していた妻と離婚したことがあり離婚したのは夫婦間で子ができなかったことが原因であること、原告が中絶を希望したのに被告がなかなか同意しなかったことなどを記載した書面を送っており、被告の名誉を毀損しプライバシーを侵害したとして、慰謝料20万円が認められています。