コラム

裁判例 男女交際と慰謝料

慰謝料と中絶費用の半額を損害と認めた裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁令和元年12月24日判決をご紹介します。
 婚活・恋活マッチングアプリを通して知り合い、被告の子を妊娠し人工妊娠中絶手術を受けた原告が、被告に対し、妊娠発覚以降、被告が適切に対応しなかったことにより精神的苦痛を被ったと主張して損害賠償を求めました。
 裁判所は「被告は,原告と性交渉をもった結果,原告が被告の子を妊娠し,中絶手術を受けるに至ったのであるから,被告は,中絶手術による身体的・精神的苦痛や経済的負担を原告と応分に負担すべき義務を負い,原告は,被告による上記応分の負担を受ける法的利益を有するというべきである。」と判断しました。
 そして慰謝料については、「被告においても,中絶手術等の費用を全額負担すると申し入れ,その一部を中絶手術の前に支払うなど,原告の負う経済的負担を原告と応分に負担しようとの態度が見られるほか,妊娠は被告との共同行為によるものであって避妊をしなかったことの結果も共同して負担すべきであることなどの事情が存する。これらの諸事情を総合して考慮すると,原告が被った精神的苦痛を慰謝するには100万円をもって相当と認め,この半額である50万円を被告が負担すべきものというべきである。」と判断し、また中絶費用の半額の賠償も認めました。