肉体関係がない交際に慰謝料を認めた裁判例
弁護士 幡野真弥
証拠上、肉体関係まで認定できないケースでも、慰謝料を認めた裁判例はあり、今回は、東京地裁平成31年 2月26日判決をご紹介します。この裁判では、原告と被告は夫婦です。
・被告は、同僚であったAと平成27年1月から同年4月までの間に、週に2~3回の頻度で会っており、日光に旅行、腕を組むなど親密な行為をし、別れ際には抱き合うなどしていた。
・被告は、手帳に、Aのイニシャルを記載し、それに加えて「kiss」やハートマークを記載しており、Aとキスや性行為をしたことをうかがわせる記載をし、更には、被告手帳や被告日記帳に、Aに対する愛情表現と受け止めることのできる記載をしている
・原告と被告との間では離婚訴訟も係属しており、離婚訴訟で、被告は「旅行に行ったことはない」旨の虚偽の供述をしている。
このような事案で、裁判所は「被告が、原告の知らないところで、異性であるAと、就職活動の相談とはいえない程度に相当な頻度で会い、相当程度親密な行為をしていることをうかがわせるものであり、原告にとって、それを知れば、被告らの親密さに対する疑念、不快感や嫌悪感を抱かせるものであるということができる」とし、被告とAの交流・接触は、原告と被告との間の婚姻共同生活の平和を侵害する蓋然性のある行為であるとして、「被告らの交流、接触は、不貞関係と同視し得る関係にあったといえ(る)」と判断し、不法行為の成立を認めました。
慰謝料の額については、被告が離婚訴訟で、「Aと旅行に行ったことはない」旨の虚偽の供述をしていることを増額事由として考慮して、80万円と判断しました。