不貞行為に故意・過失がないとして慰謝料等の請求が否定された裁判例
弁護士 幡野真弥
不貞行為が認められ、慰謝料が発生するには、相手が既婚者であり配偶者がいることを認識していたこと(故意)や認識するべきであったこと(過失)が必要です。
今回は、故意・過失が否定された東京地裁平成29年11月 7日判決をご紹介します。
夫は、平成27年10月31日、原告との居宅から出ていき、被告と同棲を開始しました。
原告は、平成27年12月下旬、被告に対し、不倫を中止してほしい旨記載した内容証明郵便を送付し、同月24日、被告はこれを受領しました。
夫は、本件通知書を受領した被告から、その経緯について問い質された際に、原告と婚姻していたことを初めて明かしました。
本裁判例では、夫は被告に対し自分が独身であると偽っており、妻からの通知書が届くまで被告は妻の存在を認識していませんでした。そのため、被告には不貞行為に関して故意があるとは認められませんでした。
原告は、被告の過失の根拠として「夫が、被告にLINEで被告を自宅に呼べないと発言していること」「夫のフェイスブックには、常に原告と一緒に撮った写真やコメントが掲載されており、また、夫の携帯電話の顔写真は原告の写真であったこと」「夫が、被告を家族や友人に紹介していないこと」などを主張しましたが、これらの事実程度では、過失があったとはいえず、裁判所は不貞慰謝料の請求を認めませんでした。