原告と夫Aには、夫婦関係を維持すべく協力する姿勢が薄かったこと等から、不貞行為の慰謝料を30万円とした裁判例
弁護士 幡野真弥
東京地裁平成21年11月26日判決をご紹介します。
事案の概要は、以下のとおりです。
・原告(妻)は、夫と結婚後、平成14年1月末から5月末ころまで実家に戻っていた。
・原告は風邪を患い、肺炎の疑いが生じた。新潟の実家から実母が状況して原告の看病に当たっていたが、原告は実母と共に長男を連れて実家に戻った。
・夫は、原告の実家を訪れ、原告に対して、一緒に自宅へ帰ろうと誘ったが原告はこれを断った。
・原告は夫に対して、離婚届出用紙に自らの署名をして手渡した。
・原告としては、自身が高熱を出していた頃に、夫が会社の同僚と飲酒して深夜に帰宅したことや夫の実母に対する態度に不満を有しており、それに対する抗議のための意味を込めて上記のような態度に及んだ。
・原告は、平成19年2月ころから、夫が原告に対してつれない対応をするようになったことに不信を覚え夫には事前に予告することをせずに自宅に戻った。
・夫は、被告と不貞行為を行った。
このような事実関係のもと、裁判所は「被告がAと交際を開始する以前から,原告とAには,互いに夫婦関係を維持すべく協力する姿勢が薄かったことが窺われるので,原告夫婦が破綻に至った原因としては,かかる夫婦の在り方にも問題があったものと認めるのが相当である。
また,被告がAとの不貞に至ったのは,Aから,原告夫婦の関係につき,虚実をないまぜにしたもっともらしい説明を受けたことが原因であり,被告がかかる説明を信じたとしてもやむを得なかったような事情も窺える。
これらの事情に加え,原告夫婦の破綻に至るまでの婚姻期間(約6年半),被告とAの不貞期間(約1年。ただし,不貞関係の開始から原告夫婦が破綻に至るまでの期間は約6ヶ月)等の諸般の事情に鑑み,本件において,被告が原告に支払うべき慰謝料の額としては,30万円をもって相当と認める。」と判断しました。
慰謝料が低額となった裁判例として、参考になります。