コラム

裁判例 不貞慰謝料請求

破綻の抗弁が認められず、慰謝料200万の支払いを命じた裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地平成19年 4月24日判決をご紹介します。
 妻が、夫Aの不貞相手の女性に対し、慰謝料の支払いを求めて訴えた事例です。

 被告は、原告と夫Aの夫婦関係は、被告とAが交際していた時期には既に破綻していたと主張しましたが、裁判所は、「被告は,Aは平成16年10月ころから,原告に離婚を持ちかけており,Aと原告との婚姻関係は破綻していた旨主張し,証人Aの証言中にはこれに沿うような部分がある。しかしながら,原告本人は,平成16年10月ころAから離婚話をされたことを否定しており,(証拠略)によれば,Aが平成17年3月ころから家に不在がちになったことは認められるものの,なお,同年6月末ころまではAは家に帰宅し,子供の送り迎えをすることがあったこと,同年5月31日にAが被告とディズニーランドに行った日もその翌日未明にAは帰宅しており,原告から浮気をしているのではないかと詰問されたこと,同年6月中にもAは被告からキスマークなどを見つけられ弁解をしていること,Aと原告とが最後に性交渉を持ったのは同年6月であったこと,同年6月末ころ,Aは原告に対し,離婚話を持ちかけ,同年7月5日ころ,離婚届に署名押印を求めたが,原告はこれに応じなかったこと,その後,同年7月中,Aは何度も原告に対し,離婚届を示し,離婚を求めたこと,同年8月1日以降,Aは,被告宅に同居するようになり,自宅に帰らなくなったこと,Aは,被告宅における同棲生活を開始した後,原告を相手方として調停の申立てを行ったことが認められる。
 以上の認定事実によれば,平成17年8月当時,Aにおいて,原告と離婚する意思があったことは認められるものの,原告においては,離婚に応ずる意思があったとは認められないし,同年6月まではAは原告と性交渉があり,Aが自宅に帰らなくなったのは,同年8月に被告と同棲生活を開始したことによるのであるから,原告とAとの間の婚姻関係が完全に破綻したのは,Aが平成17年8月に被告との同棲生活を開始したためであるということができる。そうすると,被告は,Aに配偶者がいることを知りながら,Aとの同棲生活を継続し,これにより原告とAとの婚姻関係を完全に破綻させたのであるから,原告に対する関係で,不法行為に基づく損害賠償責任を免れないというべきである。」と判断し、慰謝料200万円の支払いを命じました。