既婚者であることを隠して交際し、妊娠・中絶を余儀なくさせた事案の裁判例(福岡高裁令和3年9月29日判決)
弁護士 幡野真弥
福岡高裁令和3年9月29日判決をご紹介します。
事案は、既婚者である男性が、既婚者である事実を告げずに交際を開始したというものです。
交際開始後は、前妻とは離婚したなどと積極的に虚偽の事実を告げて女性の誤信を深めました。
また、将来的には結婚することもほのめかして、避妊具を付けない性交渉を継続させていました。
男性は、女性を誤信させたまま妊娠するに至らせ、男性は、妊娠の時点でも既婚者であるという事実を隠しながら、出産を強く希望する女性に対し、それが女性の身勝手であるかのように非難し、最終的に妊娠中絶を余儀なくさせました。
裁判所は男性の行為について、不法行為が成立するとして、妊娠中絶関連費用13万6380円、慰謝料200万円、 弁護士費用21万円の合計234万6380円の賠償を命じました。
既婚者であることを隠して交際すると、それだけでも十分に不法行為が成立する可能性がありますが慰謝料として200万円にまで至ることは少ないと思います。しかし、本件では妊娠・中絶という結果にまで至っていることなどから、慰謝料として200万円が認められることとなりました。