夫の子を出産した不貞相手に対する慰謝料が120万円とされた裁判例
弁護士 幡野真弥
東京地裁平成19年2月8日判決をご紹介します。
被告は、原告の夫Aと4年以上交際し、Aの子を妊娠・出産しました。
原告は、現在においても夫Aを完全に許すという気持ちにはなれないものの、子と一緒に従前のとおり、夫婦生活及び家族生活を送っていました。
裁判所は、「原告とAとの婚姻関係及び子らを含む原告の家庭生活は,Aと被告の不倫関係が発覚したことを契機として崩壊の危機にさらされ,原告は,極めて深刻な苦悩に陥り,耐え難い精神的苦痛を受けたものと認められる。したがって,被告は原告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,相当額の慰謝料を支払わなければならない。」としたものの「もっとも,原告に生じた精神的損害は,Aと被告の不貞行為にもとづくものであり,Aと被告の年齢,社会的立場等に照らすと,Aと被告との不倫関係及びこれに伴い原告が精神的苦痛を被ったことについては,Aにも多大な責任が存するというべきところ,原告は,現在においてもAを完全に許すという気持ちにはなれず,Aとの間にはある種のしこりが残ったままであるものの,被告との関係を告白したAを宥恕し,長女Bとともに,一つ屋根の下で家計を共にし,従前のとおり,夫婦生活及び家族生活を送っている。かかる事情は,被告が賠償すべき原告の精神的損害の額を認定するにあたって斟酌しなければならない事情であるといえる。」とし、慰謝料120万円を認めました。不貞相手が妊娠・出産といった事情は、慰謝料の増額要素であり、金額は高額になる傾向がありますが、本件では、夫婦関係が別居や離婚等に至っていないこともあり、120万円という金額になったものと思われます。