不貞相手の子を妻が妊娠したものの、夫婦関係は破綻にまで至っていないとした裁判例
弁護士 幡野真弥
東京地裁平成21年4月16日判決をご紹介します。
被告が、原告の妻でAと不貞の関係を持ち、その不貞の関係は少なくとも平成18年10月ころから平成20年4月に妻A自身が原告に告白するまで続いていました。
原告と妻Aの婚姻期間は平成9年から10年余りに及んでいて、原告には、その夫婦関係を悪化させるような落ち度があったと認める証拠はありませんでした。
そして、被告は、妻Aに自身の子を妊娠させていました。
裁判所は「これら一連の行為が,夫としての原告の気持ちを著しく傷つけ苦しめ,また当然ながらその体面やプライドをも傷つけたことは明らかである。」としつつ、他方で、
原告は、未だ妻Aとは夫婦としての同居生活を続けていること、夫婦関係を破綻させたとまで認めることはできないこと、原告に対して第一義的な貞操義務を負っているのは妻Aであるにほかならないが、妻Aの方から相当程度積極的に被告との不貞の関係を望んだ経緯がうかがわれること、原告自身が現段階ではその妻Aに対する損害賠償を求めてはいないことなどの事情を総合考慮して、慰謝料額は150万円としました。