コラム

裁判例 不貞慰謝料請求

夫が、不貞相手との関係解消に解決金を支払っていることを慰謝料の考慮要素とした裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁平成21年3月10日判決をご紹介します。

 原告の配偶者である夫Aは、平成17年4月、遺言公正証書を作成しました。
 夫Aは、その遺言のなかで、不貞相手との子を認知することと、遺産である預金から法定相続分相当額をその認知した子に贈与することとしました。
 原告は、9月ころ、夫Aから、婚外子がいることを聞かされました。
 夫Aは、11月に死亡しました。

 そこで、原告は被告に対し、訴訟を提起しました。

 裁判所は、慰謝料について「慰謝料額について検討するに,前記認定のとおり,被告と亡Aとの不貞関係は少なくとも数年間は継続し,その間に子が生まれるに至っていること,本件不貞行為の当時,原告と亡Aとの婚姻関係にはさほど大きな問題はなく,原告は亡Aが死亡する直前に初めてその事実を知らされ,大きな精神的衝撃を受けたこと,亡Aは生前に被告に対し,不貞関係に関する解決金として1億円を支払っていることなど本件審理に現れた諸事情を総合して考慮すると,原告の精神的損害に対する慰謝料は300万円と認めるのが相当である。」と判断しました。