夫から妻との交際を止めるよう注意をされていながら、妻を誘惑して交際を続けた被告の行為態様は悪質と判断された裁判例
弁護士 幡野真弥
東京地裁平成19年 2月21日判決をご紹介します。
元夫が、原告となって、元妻Aの不貞相手(被告)に対し、慰謝料を請求した事案です。
裁判所は「被告は,Aに原告という夫がいることを知りながら,Aを繰り返し誘って頻繁に密会するなどの交際を続け,肉体関係を持つに至ったのであり,その間,それに気付いた原告から何度も,Aと別れるよう申入れがあったにもかかわらず,被告は,自分からは別れる気がないことを告げ,Aに対して自己を選ぶよう積極的に求め続けたものであって,これにより,原告とAとの夫婦関係は悪化し,原告は食欲不振,睡眠不足等に陥り,精神的,肉体的に疲労した結果,離婚を決意するに至ったものである。そして,被告がAと交際を始めるまで,原告とAとの夫婦関係は円満であり,その時点では何ら離婚に至る要因はなく,その後,Aとの離婚に至る経緯において原告には何ら落ち度はみられないところである。これに対し,被告は,自らの行為が許されないことを十分に理解しており,原告からも繰り返しAとの交際を止めるよう注意をされていながら,それを全く意に介することなく,なおもAを誘惑して交際を続け,自己を選択するよう求めていたものであって,その行為態様は悪質といわざるを得ない(被告は,Aに離婚を迫ったことはないなどと主張するが,前記認定のような被告の態度からして離婚を求めていることは明白である。)。以上の事情を考慮すれば,原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては,200万円を認めるのが相当である。」と判断しました。
そして、原告が、Aと離婚するに当たりAから慰謝料として70万円の支払を受けていることから、この慰謝料の支払により、原告の被告に対する慰謝料請求権も70万円の限度で消滅したとして、130万円の慰謝料の支払いを命じました。